2007年09月

2007年09月24日 20:04

ただいま、4年に1度の世界的な印刷業界の展覧会、IGAS(International Graphic Arts Show)が東京ビッグサイトにて開催中。
祝日だった昨日、ほぼ1日かけてひと回り見学してきますた。
以下、私見のレポートを。

総評
明確な業界の動向というか方向性が見えてこない内容
(いま勤めている会社でも「見た目は派手だが中身は薄っぺら」とおっしゃっていた方が(^烹^;)
数年前における「環境」というような大きなテーマが感じられない
JDFも以前より騒がれなくなっているようだ
材料が出尽くして新味がなくなった?

個別で気になった出展
コンサルティング・教育
1)Print Media Academy(ハイデルベルグ)
「生産性の向上」「スキルアップトレーニング」「コストダウン」の3つの観点から改善提案をしていく「印刷コンサルタント」などのコンサルティング・サービスと、各種のトレーニングプログラムが2本柱。
機械だけでなくサービスやソリューションを売っていこうという姿勢に、ほかのメーカーより好印象を受ける

2)LDP研修(富士フィルムグラフィックシステムズ)
人材育成プログラム
各個人の資質を分析して能力・リーダーシップの向上のための指針となる行動開発表を作成

業務管理システム関連
1)SP-MULTI/Ev(NECネクサソリューションズ:出展はショーワ)
「印刷業トータル管理システム」
Windowsベースで受注・進行・売掛買掛・原価の管理
ミツモザウルスPROと連携可能
「JDF対応」と言うが実際には「個別に対応」ということらしい

2)プリナビ(富士機材サービス)
「印刷業務アシストシステム」
受注・売掛から仕入・買掛の管理を行なうが、ログインするとその担当者向けにカスタマイズされた受注案件・目標達成状況などが表示されるという営業支援機能が売り
(ただしリリースは来年春)

3)XML/AMPAC(日本印刷産業機械工業会)
「知能的印刷生産管理システム」
ノウハウやトラブルなどを蓄積するデータベースを構築するための仕組みのようだ

個人情報保護関連
1)日本印刷産業連合会
プライバシーマーク審査センターの設置をアピール
JaGra(すでに審査の指定団体)を除く加盟団体に加入している企業が対象

2)メディアクラッシャーNCM-3700(ナカバヤシ)
CD・FD・カードはもとより、HDD・携帯電話・ビデオテープまで破砕
ただしでか過ぎ(自動販売機2〜3個分ぐらい?)。とても置き場所がない(^烹^;

ウェブを活用したソリューション
ネットパブリッシングサービス(凸版印刷:出展はリコー)
地域や期間によるカスタマイズが可能な販促物マネジメントシステム

デジタル検版
1)Proof Checker Pro(ソフトウェアToo)
「PDF」「ページ単位」での比較が売りのデジタル検版ソフト
文字物の検版にはProof Eye Meのようなものより向いていそうなタイプ

2)プリプレス・プリントシステム(セイコーアイ・インフォテック)
「高速の検版・プルーフ出力」を目的としたソリューション提案

3)Hallmarker(ジーティービー)
あおり検版感覚で赤字と訂正箇所の比較が見やすくなっているデジタル検版ソフト

デジタル印刷
PagemasterPro6500(コニカミノルタ)
「ハイクオリティカラーレーザープリンタで、PODからハイエンドDDCP用途まで幅広く使える」とのこと

その他の感想
1)JDFパビリオン
Asura(OneVisionから出ているPDFやPSデータを適切な印刷用データに検査・修正するソフト)に関するプレゼンテーションを聞いたほか、各社パネル1枚の展示を見る
海外のものに偏っているような印象
JDFがいまひとつ普及しているように感じられないのは、「所詮輸入物」感覚で国内での内発的な要求で出来たという実感に乏しいからなのか?などと感じた

2)広色域6色プロセス印刷システム「DICシックスカラーシステム」
広色域4色プロセスインキ「湧水wakimizu」 (大日本インキ化学工業)
前者はヘキサクローム、後者は東洋の「kaleido」の追随っぽいのだが?
来春に社名を「DIC」と改称するらしいけど大丈夫?
東洋インキのほうが意欲的な出展内容だったように感じる


2007年09月17日 20:37

第31回「罪有る者は必ず誅さるれば、誅さるる者は上を怨まず」

今、功有る者は必ず賞さるれば、賞さるる者は君を得(徳)とせず。
力の致す所なればなり。
罪有る者は必ず誅さるれば、誅さるる者は上を怨まず。
罪の生ずる所なればなり。


「難三」第三十八より。特に訳さなくても分かりそうな内容ではあるが、

「いま、功績のある者が必ず賞を受けるならば、賞を受ける者は君主に徳があるとは感じない。
みずからの力によって為しえた結果だからである。
罪ある者が必ず誅されるならば、誅を受けた者は君主を怨まない。
みずからに罪が生じた結果だからである」


サラリーマンは得てして自発性が弱い。長らく、言われたままをそつなくこなしていれば何とかなってきていた。そういう先輩なり上司なりを目の当たりにしてきているから、近年入社している若手も真似をするようになる。就職に苦労した場合もこれに近い心理になるのか、アンケートなんかでも「残業を頼まれれば進んでやる」だの「定年まで勤めたい」だの「会社の人間との付き合いも断らない」だの、これまで「愛社精神」のある、好ましい態度だと考えられてきたような回答が高率だったりする。しかし、こういったみずからの能力なり功績とは関わりのない部分でのつながりに頼るような態度は、成長している分野の産業であれば安心感につながるという側面があるのかもしれないが、少なくとも市場がすでに成熟してしまっている・あるいはピークを過ぎてしまったような分野の産業には望ましい人物像といえない。進んで新しいことにチャレンジする、自発性を持った人材を賞揚することで、社員がそのような人物になりたくなるよう、仕向けなければならない。

そのためには、罰はともかく、賞の使い方がポイントになってくる。停滞している雰囲気のなかではとかく格差をつけるのを嫌う性向があるようだが、「少ない成果をまんべんなく」全員に行き渡らせたところで、目に見える変化は現われない。社員も少しばかり収入がマシになったからといって特にありがたがるわけもなく、「生活のため」と称して思い思いの出費につぎ込んでしまうに過ぎない。そこには将来へのビジョンなどないといってよい。貯蓄に廻すのだとしてもそれは単に自分とその家族のことが頭にあるだけで、自発的に会社の業績を良くして自分の収入アップを獲得しようとかスキルアップを試みようとかそういう前向きな考えなど思いも及ばない。そうであれば、同じ原資を自発的に行動して成果を挙げているような人物に振り向けて、ほかの社員に手本を示して見せるべきである。

こういった土壌を作るためには、一見矛盾しているように思えるかもしれないが、職務の標準化や職能要件書の整備といったような、業務をすすめるうえでのガイドラインになるようなものを明確化する必要がある。なぜなら、何にもないところで何が優れていて何が良くないかということは言える根拠が存在しないからである。まず基準となるところを明確にして、それよりも優れている・劣っているという話にしなければ、公正とはいえない。自発性のない人物であっても、少なくともこの基準に則るように職務を遂行させられれば確実性は担保できる。しかし、それにプラスアルファを求められるようにするには、基準以上の成果をもたらした人物を顕彰する仕組みを要する。基準を設けるうえではこの2つの側面から検討されねばならないだろう。マネジメントシステムによる作業手順の確立には、このための材料にするという意識も求められる。


2007年09月09日 20:14

先日、中小企業診断士1次試験の合格発表があったが、「運営管理」・「経営情報システム」の2科目をとりますた(^烹^)/。おおむね受験時の手応えどおりといったところか。
「3年計画で1次突破」を考えているところなので、いちおう必要最小限をクリアしたというところか。甘くないというのは痛感させられたが、かといってまんざら高嶺の花と決め付けなくてもいいかな?という自信がついたようだ。
来年・再来年で残り5科目クリアできるよう、がんばるつもりである。

第30回「盗賊に恵む者は良民を傷なう」

夫れ草茅を惜しむ者は禾穂を耗らし、盗賊に恵む者は良民を傷なう。
今、刑罰を緩くして寛恵を行なうは、是れ姦邪を利して善人を害するなり。
此れ治を為す所以に非ざるなり。


「難二」第三十七より。

「雑草を惜しんで刈らないでいる者は穀物の穂を消耗させるし、盗賊に恵みを与える者は良民を損うものだ。
いま、刑罰を緩くして寛大な恵みを行うというのは、邪な者に利して善人を害するということだ。
これは政治を為すあり方とは言えない」


現在、企業の運営においては罰則というものを的確に運用する仕組みが整っていないように思える。処罰される者が頻繁に現われるというのでもそれはそれで問題があるのかもしれないが、実際に処分が行われるという場面が見られないというのでは形骸化してしまっているとのそしりも免れないし、「どういうことをやったらどういう結果となる」という意味での教育も充分に出来ているとはいえない。だから社員も結果に対する想像力がわかないし、会社や業務を軽んずる結果につながるといえる。例えば「五時までとりあえずいればいい」みたいな考えで、目先の業務に追われていなければ好き勝手なことをやっているような手合いがいる。主体的に業務を掘り起こそうとか多忙にしている人物を手伝おうとか、そういった考えがわかないのだ。こういった種類の人物は職務専念義務違反であるのだという意識が、社員はおろか管理職や経営層ですら持っていないのではと疑われるのだ。

こういった、成果を二の次にしてうわべだけを整えているだけのような人物の存在は、その人物を目の当たりにするほかの社員の業務への意識にも影響するし、もちろん相手をさせられる社員の効率も悪化する。まさに「いなくなってくれたほうがいい」社員だ。だが、現実にはこういった社員を処分できる仕組みが整っているとはいえない。判断基準が曖昧であるし、対応するべき罰則の設定という面でもいまは充分とはいえないだろう。現在は就業規則にみられる「懲戒」というような大掛かりなものしかなく、おいそれと適用できないという側面もあるのではないか。

以下に触れることは法律的な側面から検証する必要があるのかもしれないが、もっと実際の場面で適用できるような、程度の軽い罰則を適切に運用することによって、社員を的確に動かすことを考えていくべきであろうと思われる。ペナルティとして「次期査定の1項目マイナス」とか「罰金1000円」とか、そういった程度のものでいいだろう。社員が自分の行なったマイナスについて結果を実感するようになれば、自分の行動についてもっと責任を意識するようになるだろう。

そして「何をやってはいけないのか」「何をやったらどれだけのペナルティがあるのか」といった部分の設定・教育を担うのがマネジメントシステムの役割であるといえる。リスク分析実施の結果、どういった行為がどういった結果をもたらすのか、そういったことが見えてくれば、その設定すべきところはおのずと見えてくるはずだ。そして、手順なり規程なりの説明の折り、警告の意味も兼ねてペナルティについても言及する。論拠を理解させることが出来ればなおよいが、まずはやってはいけないことを知らしめることが必要である。まずは形から入っていくことである。


2007年09月02日 20:48

第29回「君は爵禄を垂れて以て臣と市す」

且れ臣は死力を尽くして以て君と市し、君は爵禄を垂れて以て臣と市す。
君臣の際は、父子の親しきに非ざるなり。計数の出だす所なり。


前回同様、「難一 第三十六」より。

「そもそも臣は死力を尽くすことをもって君主と取引し、君主は官爵・俸禄をぶら下げることをもって臣と取引する。
君臣の関係は父子の親しさのようなものではない。利害の計算から出てくるところである」


前回の舜の話もそうだったが、この章段は、一般には美談とされるエピソードを採り上げて、韓非の法家思想の観点から反駁を加えるという構成になっている。この語は斉の桓公に対して管仲の残した遺言を捉えて、「人物の行動を法によって律するのではなく、主君に媚びる人物個人を捉えて遠ざけるべきだという表現になっているのに問題がある」と論じたくだりに見える。

活動を共にして長期にわたると違う側面も出てくるのかもしれないが、経営者と社員はあくまで経済的な関係でつながっているものであって、友情とか親近感でつながっているものではないということを改めて捉えなおさなければならない。実際に家族で経営しているような小企業であるならともかく、「家族的経営」というような文句をいい意味に考えるのはこんにちの企業のあり方としてはふさわしくない。

業務を行なうのが結局のところ個人になってしまうのでつい間違えてしまいがちだが、「誰それがやる」ではなく、「どこそこの部門がやる」と捉えて、その「誰それ」がいない場合でもちゃんと処理できるような、システマチックな発想をベースに組織が出来ていなければならない。そのためには、「何をするべきか」という手順が文書なり何なりで明確化されているべきであるし、「何をすべきではないのか」という点も罰則としてはっきりと決められていなければならない。

こういったことが整備されておらず人間的な親しさを頼りにつながっている組織では、業務の結果が保証されているとは言えない。それは、稀に期待以上という結果が出るかもしれないが、おおむね「期待以下」に終わるといってよい。なぜなら、人間的なつながりに甘えて、業務以外の要素を優先させるような手合いが労働者の大半であるからだ。プライベートの都合を優先させて業務や部門の事情を考慮せずに休暇をとったり、「業務の重要性」より「自分のやりやすさ」で恣意的な優先順位を付けて処理したり、そういったことがまかり通っているのだ。

「仲良し社員」をあてにしたなりゆき任せではなく、計画的な企業運営を志すのであれば、経営者と社員との関係はあくまで利害をベースにしたドライなものであるということを再認識しなければならない。そして、マネジメントシステムという枠組みのなかで、どういう行動が求められているのか、明確な文書化をしていく作業が必要だ。それは特に、業績が右肩上がりではなくなった、成熟した市場にある業界の企業であるほど求められるといってよい。企業運営とは違った要素の混入によって生じるムリ・ムダ・ムラを徹底排除することによって、本来生じるべき利益を取りこぼさないように考えていかねばならない。


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